« 夢と現実の間で(6) | トップページ | 夢と現実の間で(8) »

2006年7月 2日 (日)

夢と現実の間で(7)

それから私が話をした。
「前回帝王切開をしてから痛みにすごく弱くなってしまって。それでも、それでもいいと覚悟していたけど。やっぱり怖い」この時初めて涙が出た。

主治医が「切っている時に痛かったとか?」と聞いてきたが、的をはずれていて、
「いや・・・そういう事ではなくって」それしか言えなかった。

静かだった。沈黙が続く。

ふと周りを見ると、女医さんが書き留めていた手が止まっていた。手を前で組み、じっとどこかを見つめている。横の先生はまだ何か書きとめている。

椅子の前にはデスクがいくつもある。デスクの向こうから、先生がこちらを伺っていた。
女医さんの後ろの辺りでは何か作業をしながら、先生が振り返りながらこちらを見ていた。

私・・・何か変な事を言ってしまったのかな?もう何がなんだか分からなかった。

主治医がようやく話出した。
「とにかく、後は赤ちゃんを出すだけです。そうしないと、お母さんが危ないので」

パパが「本人(私)は大丈夫ですか?」と主治医に聞く。
何より私の心配をしていてくれるんだ・・・少し嬉しかった。

「今すぐにではありませんが、明日かあさってには・・・、旦那さんとお母さんは明日は何時から来れますか?」先生が聞くと、パパは「現場があるのでどうしても・・・午後からになります」母も、「仕事があるので、午後に・・・」先生が頷く。

そんな会話を聞きながら、私はとても苦しかった。明日朝から陣痛促進剤でいよいよ出産が始まる。不安で仕方ない。怖かった。一人は嫌だった。

「赤ちゃんは?赤ちゃんは一緒に・・・退院?」ボーっとした感じで聞いた。

「出産後こちらでお預かりします、一緒に退院出来ます」
そう聞いても何がなんだか・・・頭が真っ白。

それから何か質問は?と聞かれ、もう何も聞くことが出来なかった。
私は先生の方を見ず、パパと母の方に顔を向ける。「今は・・・なにも・・・」
それではとみんなで席を立つ。

やっと開放された気分。苦痛で仕方なかった。

その時パパが先生に向って「よろしくお願いします」と頭を下げて言った。
先生は何も言わず、頭を下げる。

不安で、1人で陣痛を待つのは怖かったが、そんなパパが嬉しかった。
そんな時でも自慢だった。

|

« 夢と現実の間で(6) | トップページ | 夢と現実の間で(8) »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/116388/3740369

この記事へのトラックバック一覧です: 夢と現実の間で(7):

« 夢と現実の間で(6) | トップページ | 夢と現実の間で(8) »