2006年7月 2日 (日)

悲しい出産(5)

静かな・・・静かな出産。

こんな出産があるなんて、思いもしなかった。

産声は聞こえなかった。

信じられなかった。

本当だった。

誰も何も声を掛けてはくれなかった。

とても静かな時間だった。

私は確かに赤ちゃんを出産した。

赤ちゃんが生まれた。

産声は聞こえなかったけれど。


さよなら、天使。

さよなら

我が家の赤ちゃん。


2003年2月19日
午後5時49分

体重 1130グラム
身長 36.0センチ
胸囲 23.0センチ
頭囲 23.4センチ

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悲しい出産(4)

ふと思った。「立会いは?立会いは出来ますか?」と聞いた。
「ごめんね。ここはしてないの」と言われ、
「ちゃんと仕切っているのに出来ないんだ?前の子の時は帝王切開だったから、立会い出きなかったな・・・」と独り言を言っていた。

お姉ちゃんの出産の頃は、病院自体が立会出産をしていなかった。けれど、お兄ちゃんの時は出来たので、希望したが帝王切開だったので、叶わなかった。
最後になるかもしれない。パパと一緒に出産したかった。

それから・・・思っていたのは、前の子の出産の時の事だった。

お姉ちゃんの時は羊水を少し飲んでしまったようで、なかなか泣かなかったな・・・。
お兄ちゃんは元気な、ものすごい勢いで泣いていたな・・・と。
二人の産声を思い出していた。

女医さんが何度もお腹を押す。陣痛が来た時に「少し息んで下さい」と言われ、2回ほど息んだが、寝不足で頭はもうろうとしていた。ガクっと力が抜けた。先生2人が私を見た。もう何もする気が起こらなかった。

しばらくして、まったく陣痛は遠のいていた。左の部屋からさっき笑っていた先生が来た。エコー画面で下腹部を見ながら、「これが邪魔している事もあるから」と言った。
女医さんもエコーで確認。

それから若い先生が人口破水をした。プシューッとものすごい勢いで羊水が出て来た。麻酔もしていたので、私も大分落ち着いていた。冷静だった。
こんな風になるんだ・・・びっくりした。

後から来た先生が右にかけてあった黒板に書き込みをする。
女医さんが「私が麻酔を使ったので、すみません」とその先生に謝っていた。先生はまた左の部屋に戻った。

女医さんがまた子宮高を押す。

しばらくして、何かすっと、ラクになって来た。私は唇を噛んで天井を眺めていた。
気が付くと呼吸法を1人でしていた。
女医さん、助産師さんが私の顔を覗いているのが見える。

しばらくして、足元にいた若い先生が何か引っ張っていた。
赤ちゃんだった。なかなか出てこない。引っ張っている。痛くはなかった。
先生2人がチラッとこちらを見た。私は天井を見ていたが、少しだけ赤ちゃんを見た。

助産師さんが両手で赤ちゃんを抱き、左の部屋に行った。
それから、胎盤を若い先生が抱え、その後を行った。

それを見届けて、また唇を噛んで天井を見ていた。涙は出なかった

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悲しい出産(3)

昨日の若い助産師さんが車椅子に乗せてくれた。いよいよ分娩室へ。
内診をしたので、パパと母は廊下で待っていた。廊下には時間が丁度対面の時間だったろうか、何人かの人がいた。

母が「○○もう仕方ないよ」と声を掛ける。後ろを振り向いて「大丈夫だからね」
反対に振り向いて、パパを探す「大丈夫だからね」
パパは「頑張って」肩をたたいた。

お姉ちゃん、お兄ちゃんの時もそうだった。2人に見送られ分娩室に移動した。
パパはいつも「頑張って」と言ってくれた。

ああ・・・今回は違うんだな。とても虚しかった。元気な赤ちゃんを産むわけでわない。
そう思いながらも、今回はそれ程気が張っていなかった。麻酔を入れてもらえる。
大丈夫。もう痛い事なんてない。

分娩室に入ると、女医さんが忙しく支度をしていた。左の部屋から、先生が何か装置を運んで来た。もう1人の先生がタイミング悪く違う処置に行っているという。
笑いながら、なんであいつはそうなんだ・・・みたいな事を言っていた。

四つんばいになり分娩台に1人で上がった。「胃が痛い」と言うと、「胃が痛い?」と女医さんがびっくりしたような声を出した。仰向けに寝て、陣痛が来ていた。それから麻酔を入れてくれた。

しばらくして先生達と説明の時にいた、若い先生が来た。タイミングがいつも悪いらしい。私のすぐ左で点滴の様子を見ている。鼻血が出たのか、鼻にティッシュがつめてある。

女医さんが透明のゴム手袋をしていた。内診をする。痛くなかった。
助産婦さんが消毒をする。先生が足に布を掛ける。

左にいた女医さんに向って「どうやって出すんですか?引っ張り出すの?」と聞いた。
赤ちゃんは亡くなっている。どうやって出て来るのか分からなかった。
先生は「大丈夫ですよ~」とだけ答えた。

女医さんが左、足元に若い先生。右に若い助産師さん、3人だった。
足元の窓の上には、カメラがあった。もしかして、あれで撮影しているのだろうか?と思った。

右手で、胃の辺りを女医さんが何度も押さえる。「痛い!」おもわず先生の手をつかもうとした。右に立っていた助産婦さんが手を握ってくれた。女医さんがありがとうというように、助産師さんに頷く。

「張りが来たようだったら、教えて下さい」と言われた。しばらくして、麻酔が効いて来た。陣痛が遠のいていた。

「先生の押さえて居る所は何ですか?」と聞くと、「ほぼ子宮高です」「あ・・・じゃ、胃が痛いんじゃなくって、そこが痛いんだ」「そうだね。収縮しているから、そうかもしれないね」

そして、先生が何度もお腹を押さえてる。位置がどんどん下に下がって行く。
後で思うとこういうのを誘導分娩と言うんだな?と思った。

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悲しい出産(2)

午前中は1人でいた。午後にはパパと母は来てくれるだろう。
それまでには出産にはならないと、思っていた。
他の誰にも会いたくなくって、パパに誰も来ないようにと言っておいた。

トイレに行くと出血していた。もう移動するのも大変だ。
お腹の装置をはずして、点滴も一緒に移動しなければならない。何度も行った。
その度看師さんを呼ぶのも悪いなと思っていた。

でも、促進剤の副作用らしい。
お腹がゆるくって、とても我慢出来なかった。
下着も汚してしまい、何度か自分ではきかえた。

お腹の痛みが陣痛に変わってきた。枕元に目覚まし時計を起き、にらめっこしていた。
2、3分おき。痛みがかなり強かった。

看護師さんが来たので、「痛いので、痛み止めを入れてもらえますか?」と言うと、
「帝王切開もしているし、あまり入れない方がいいんじゃない?」看護師さんによって大分言う事が違う。

女医さんが来て、「乗ってきた?」と装置の記録を確認する。内診。痛い。
子宮口も2センチほど開いていたようだ。麻酔をチューブの先から入れてくれた。

麻酔を入れると少し痛みが遠のく。

母が先に来てくれた。

しばらくしてパパが来た。心強かった。ベットの足元にパパに座ってもらって、足を揉んでもらった。気持ち良かった。

それから何度もトイレに行った。麻酔を入れているので、座っても1人で立ち上がれない。母を呼んで、支えてもらって立ち上がり、看護師さんを呼んで病室に戻る。

何度か先生も来て、装置で張りを確認しながら、点滴の速さを変えて行く。

それからまた痛いので、麻酔をお願いした。先生が来て内診。痛い。
子宮口は6センチ開いているとの事。
先生に「全開大になるまで、待つんですか?」と聞くと、「赤ちゃんも小さいから6センチで出ない事もないけど、それまで待ちます」

それから麻酔を入れてくれる。「入れるとやっぱり違う?」
私は横を向き、「違う」とそっけなく言った。

しばらくして、お尻の辺りに圧迫感を感じた。看護師さんに伝え麻酔をまたお願いした。すぐに女医さんがやって来て、内診。もう痛くはなかった。
「大分進んで来ていますので、移動しましょう」女医さんが顔を近づけて言う。

もう、怖くはなかった。早くこの痛みから解放されたかった。「麻酔は?」
「向こうで入れましょう」そう言って出て行った。

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悲しい出産(1)

2月19日(水曜日)
緊急オペに備えて、朝食なし。前の夜9時から、水分も摂らないようにとの指示が出ていた。

手術に備えて、心電図などの検査をしに車椅子に乗って、病院内を移動した。

「トイレで浣腸をします」と若い看護師さんが呼びに来た。体がだるくなかなか起き上がれず、ゆっくり支度していると、「早くして下さい」とまた様子を見に来た。

9時くらいだったろうか・・・?処置室に来るように呼ばれる。看護師さんが車椅子を用意してくれる。病室を出たところで、看護師さんから声を掛けられた。廊下には誰もいなかった。

「もう我慢しなくっていいからね、痛い時は痛いと言っていいのよ。泣いていいのよ」
緊張がほぐれまた涙が止まらなくなった。泣きながら処置室に入る。

女医さんが待っていた。ラミナリアを抜く。
「昨日より時間かかりますか?」看護師さんに聞いた。昨日よりは時間がかからないとの事。麻酔はなし。怖かった。

処置台にあがり、カーテンが締められた。消毒をしてから、突然痛くって、「痛い!」というと、「カーテン開けようか?」と看護師さんが声を掛ける。「いえ・・・大丈夫です」冷や汗が出て来た。カーテン越しに女医さんが「痛いかな?昨日よりは痛くないと思うけど」

それから、後ろにあったベットに横になる。右腕に陣痛促進剤の点滴を注射。
「ちょっとたたきますよ」何度も何度も、女医さんが腕をたたく。血管を捜していた。
私は泣いていた。

終わって起き上がると、担当の助産師さんも来ていて、起こしてくれた。
「目がチカチカする」と言うと、「血圧計って」と他の看護師さんに指示していた。
病室に戻って計ってくれたが、特に異常はなかったようだ。

お腹には張りを測定する装置がつけられた。つけてみてすでにお腹が規則的に張っているのが分かる。1人で横になって、目覚まし時計とにらめっこしながら装置を見ていた。
先生が様子を見に来て、「規則的に張ってるね」と言って出て行った。

看護師さんが病室に来て、カーテンの向こうで私のテーブルを使い、足元で記録をしていた。何度も装置の様子を見に来る。

点滴は二つ。促進剤と、食事が取れないので栄養補給らしい。

しばらくして妹が差し入れを持ってやって来た。その頃には張りが大分強かった。
先生も来て確認したが、まだ陣痛ではないとの事。

足がすごく暑かった。布団から足先だけを出していた。
「妹が足さすろうか?」と言ったが「大丈夫よ」と言った。しばらくして、私は寝てしまった。昨日も眠れなかった。気が付くと妹の書き留めた手紙が枕元にあった。

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夢と現実の間で(12)

消灯後。同じ病室の隣の方に声を掛けた。少しだけ話をした。

お互いどうしてこんな事になったんだろう?と話をした。
助産師さんには対面を薦められたけど、今はどうしようかと迷っていると言っていた。
私も同じだった。

夜中、担当の助産師さんが交代で戻ったようだ。
見回りに来て、私に声を掛けてくれた。

「昼来た時より目が冴えてるみたいね」
私の周り、ベット下のゴミ箱辺りにティッシュが散らかっているのを片付けてくれた。

「出産も明日かあさってになりますよね。眠れないんです」

「大丈夫よ。もし明日出産にならなくっても、お休みにして薬で眠る事も出来るから、今日の今日だもの、今夜は眠れなくっていいの。横になって休むだけ、眠ろうなんて思わなくていいのよ」

そう言ってもらって、心強かった。

隣の方も泣いていた。声が出てしまうのを我慢して、2人で泣いていた。

長い長い夜だった。

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夢と現実の間で(11)

しばらくして、主治医と女医さんが戻って来た。姿が見えると足がガクガク震えて来た。寒かった。怖かった。

足を固定し、足元で電気が光っていた。ラミナリアの挿入。
「痛い!!」
左に立っていた若い助産婦さんが、宙を浮いていた私の左手をまた握ってくれた。

気が付くと、4人ほどの先生が足元にいただろうか?
主治医は右元で私が痛みをのがす呼吸法を一緒に促してくれていた。

主治医が声を掛けてくる「痛いですか?」「でも・・・思ったより・・・痛くない」
「麻酔をしているからね、麻酔をしていないと、これは本当に痛いんですよ」
「あ・・・麻酔をしているから痛くないんだ」私は頷いていた。
「麻酔をしているから、痛くない」そういう主治医の後を、「麻酔をしているから痛くない」と私が言っていた。

まだかな?まだかな?痛いよ・・・・・・・。

手を握っていてくれた若い助産師さんが「ごめんね、ごめんね、ここ握っていて」とバーをつかむよう促す。何か作業があったのだろう。私はなかなかその手を離せずにいたが、バーを思いっきり握った。

主治医が「あとガーゼだけです」そう言うと、「あと、ガーゼだけ、ガーゼだけ・・・」と言っていた。
そして、処置が終わる。私は全身の力が抜けた。先生達が右奥の部屋に行った。

それから車椅子に乗り病室へ戻る。パパが待っていた。
時間は・・・8時前だっただろうか。

母は自宅で子供の夕飯もあるからと帰っていた。
パパにも明日があるからと早めに帰ってもらった。

それから夕飯を食べた。やはり食欲はあまりない。

横にはなったが、背中のチューブが痛くて気になるし、仰向けになるのが怖かった。

どれ位たったか、トイレに行った。戻って来てベットに座って、お腹をさすった。
こんなに大きいお腹ともお別れ。この中に赤ちゃんがいるなんて・・・。悲しかった。
すぐに横になった。

こっそり枕もとに携帯を置き、メールを確認した。
友達にも連絡をしたので、いくつか入っていたが、返事を送る気力がなかった。

涙が沢山出た。

パパからメールが届いた。
『大丈夫かな、なんか突然の事でびっくりしたね、○○さん頑張ってね』
嬉しかった。

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夢と現実の間で(10)

私はまだ椅子に座っていた。なかなか先生が来ない。「先生遅いね」と言って準備をしていた若い助産師さんが右奥の部屋に様子を見に行った。

しばらくして、女医さんと一緒に戻って来た。なんとなくホットした。若い助産師さんにそっと聞いてみる「女の先生だけ?」助産婦さんは黙って首を振った。

それから分娩台に右向きに横になる。背中いっぱいに消毒。女医さんはひとつひとつ今からどんな事をするか説明しながら、進めてくれた。しばらくして何人かの先生が来た。

いよいよ。カテーテルを腰に挿入。

「もう!!注射なんて大嫌い」そう言うと、怖くって何かにすがりたかった。左手で何もないのだけれど、手が何かをつかみたくて探していると、目の前にいた若い助産師さんが手をぎゅっと握ってくれた。私も思いっきり握った。主治医がその横にも立っていた。

背中を突き出す。右手は行き場がなく。自分の頭をぎゅっと握っていた。

お兄ちゃんの時は帝王切開。あの時はちょっとずれてしまったのか?足がとてもしびれて痛かったのを思い出す。体は怖くってガチガチだった。冷や汗が出て来る。
でも、今回はあの時程痛みがなかった。でも、痛かったけど。

「あとテープで止めるだけですよ」女医さんがひとつひとつ説明してくれた。
腰に刺したチューブの先を左肩で止める。

主治医が仰向けに起こしてくれる。「あ・・・本当。汗びっしょりだね」

そして女医さんがとめたチューブの先から、麻酔を入れた。「ちょっと冷たいですよ」

「あ・・・本当だ・・・」背中を通って冷たいものが流れるのが分かる。

「足が温かくなってきたような感じがしませんか?」と女医さんに聞かれるが、「緊張していて良く分からない。あ・・・でもしびれてきた・・・」
主治医が「それでいいんですよ」

下着を若い助産師さんが、突然脱がす。

私を挟んで主治医と女医さんが「じゃ・・・15分」と確認していた。
それからまた右奥の部屋に2人行ってしまった。15分で麻酔が効いてくるようだ。

分娩台の上に、下半身は何もつけない状態で、足を折り曲げ待った。寒かった。
何もかけてくれなかった。

私の左に若い助産婦さんが椅子を置いて座った。

「私ね。3人目なの。だから、最後にしようと思ってた。そう思っていたのに」
両手で顔を覆い、声を出して思いっきり泣いた。
若い助産師さんが声を掛けてくれたが、よく覚えていない。

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夢と現実の間で(9)

それから助産師さんと向かい合わせ、椅子に座った。
二人っきりで話しをした。

「痛みに弱いって例えばどういう事?」

無我夢中で、目で見えない所でいきなり痛みが襲ってくる。それが嫌だと説明する。

私はかなり取り乱していたのだろう。
助産師さんがこれからの処置を詳しく説明してくれた。説明にもとても力が入っていた。

そして、「初期の時のいわゆるソウハとは違うの。今から出産するのよ。赤ちゃんとの対面はどうする?」

「え??・・・・皆は・・・?みんなはどうしてるんですか?」

私を静めさせようと、また助産師さんに力が入っているのが分かる。

「赤ちゃんもね、7ヶ月お腹の中で一緒に一生懸命頑張ったのよ。頑張って来たのよ。今すぐに決めなくってもいい。でも旦那さんには強く言うの。あなたは父親でしょ。だから会って、抱っこしてあげて!って」

そう言われても、あの時はどうすればいいか分からなかった。

お腹の中で亡くなっている。亡くなっている子を出産して・・・抱っこ?

何がなんだか、どうしていいのか。分からなかった。


助産師さんが右奥の部屋に足早に去って行った。奥で誰かに声を掛けていた。
誰に向けてだろう。「とにかく丁寧に、手早くね」

そして入れ替わりに若い助産師さんが遠くから声を掛けてきた。「○○さん大丈夫?」

「大丈夫じゃない、今まですごく頑張って来た。でも、もう頑張れない」
なげやりにそう言った。

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夢と現実の間で(8)

病室に帰って休む間もなく担当の助産師さんから声が掛かる。

「夕飯前に処置も終えた方がいいと思うので、すぐに行きましょう」

もう・・・嫌だった。痛いのはもう嫌。一生懸命涙を堪えていたけど、もう止まらない。

妹が持って来てくれたパジャマはスウェットの上下、今から処置をするのにそれよりは・・・と、助産師さんが病院着を薦めたので、着替える事に。

助産師さんが病院着を持ちにいっている間、とても不思議な感覚があった。

夢かもしれない。私は・・・今夢の中かもしれないって。早く横になって目覚めたい。
いつも夢の中でも横になると目が覚めたりする。

「今は夢の中なのかな?」と母に聞いていた。
母は・・・「本当・・・夢だといいね」って・・・。

着替え終わって、病室から出るのをためらっていた。泣いていた。

泣いている私に母が「もう泣かないで」と強い口調で声を掛ける。

病室を出て、すぐに左にトイレ、右には新生児室、授乳室がある。
対面の時間、何人かの方が廊下にいた。赤ちゃんを眺めていただろうか・・・。

その横を助産師さんに腕をつかまれ、泣きながら足が進まない私がいた。
パパも頑張ってと後ろから声を掛ける。

助産師さんが私を支えながら声を掛ける。
「ずっと怖かったんだよね。一人でずっと怖い怖いって思っていたんだよね。怖い時は足がすくむよね」

スリッパを履き替え、分娩室に入る。分娩台がある。冷たい分娩台。
こんな気持ちで上がるにはかなりの抵抗があった。

分娩台にはすぐに上がらずに、その脇に椅子が2つあった。若い助産師さんがいたが、右奥の部屋に行った。

泣きながら言った。

「普通の出産の時は呼吸法だとか、そういう事は沢山教えてくれるけど、帝王切開とかこういう時の心構えなんて、誰も教えてくれなかった」

誰に言ったわけではなかった。1人で怒りをぶつけていた。

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